スポーツとドーピング

ドーピングとは

スポーツでは競技者の公平性や、努力、チームメイトとの信頼関係、相手へのリスペクトや誠実さが常に求められます。競技能力を高める手段のなかには、ドーピングとして禁じられていることがあります。 　ドーピング薬物や手段は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA) の禁止表に掲載され、毎年1月1日には少なくとも１回(なにかがおこればその都度)更新されます。

医療とドーピング

競技者もヒトである以上、医療を受ける権利はあります。しかし病気の治療薬の中にも禁止物質があります。禁止薬物による治療がどうしても必要な場合には、治療使用特例の申請・許可が必要です。国際大会に参加する競技者は国際競技連盟などに提出する必要などがあり、個々の競技者は常に主治医や競技連盟との密接な情報交換によって気をつけなければなりません。

日常生活での薬とドーピング検査薬物

意外に知られていないのは、病院での処方薬よりも市販薬についてです。

・サプリメント
サプリメントは法律上、薬品には分類されていません。どんな成分が含まれているかわからずにドーピング検査に引っかかって驚くような事態が起きたりします。
特に、

①筋肉増強
②脂肪燃焼
③痩身（やせること）
を目的とするサプリメントは、注意が必要です。

①蛋白同化ホルモン(男性ホルモン)、
②エフェドリン(エフェドラ)、
③利尿薬・エフェドリン
などの禁止物質が表示されていないのに含まれていたという報告があります。

・漢方薬
漢方薬は生薬の組み合わせでできています。生薬とは自然でとれたものの一部を加工して作られており、問題ないと思っている方もいるかもしれません。しかし漢方薬を構成する生薬の中には、明らかに禁止物質を含むものがあります。 禁止薬物には植物由来の成分がたくさん指定されているので、気をつけた方が無難です。(丁子、附子、細辛、南天実、半夏、麻黄、ホミカなど)

・日常的に避けた方がいい薬

• 市販の風邪薬・鼻炎薬・咳止め・胃腸薬・便秘薬
  (エフェドリン等の禁止薬物の他、西洋薬のような商品名の薬にも漢方薬が入っていることがよくある)
• のど飴
• 強精薬
• 毛髪、体毛用薬

産婦人科領域で使用するドーピング禁止薬物

・抗エストロゲン薬(クロミフェン・セキソビット)

不妊症領域で排卵誘発剤として使用します。この薬剤はエストロゲンと拮抗する作用があり、脳から卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌を促します。結果として男性ホルモンの産生が増加することから、禁止物質となっています。

・ダナゾール・ボンゾール

かつては子宮内膜症治療薬として使われていました。現在は副作用が強いことや、低容量ピルや黄体ホルモン製剤などより良い製品が出てきたこともあって、あまり使われていません。

・選択的エストロゲン受容体モジュレーター（SERM）ラロキシフェン

閉経後の骨粗鬆症治療薬です。

・女性ホルモン注射薬

以前は更年期障害などの治療に汎用されていた、ボセルモンデポー、ブリモジアンデポー、ダイホルモンデポーなどは、男性ホルモンを含むため禁止物質です。最近はあまり使われることはなくなっている製剤です。

・その他

産婦人科領域ではありませんが、乳癌治療のホルモン治療剤も禁止薬物です。

毎年更新されますので、選手各位においては御自身でご確認ください。
https://www.playtruejapan.org/entry_img/2023_prohibited_List_jpn__final.pdf

ハイパフォーマンススポーツセンター
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/medicalinfo/gynecology/tabid/1318/Default.aspx

ピルはドーピングにひっかからない？

ホルモン剤ということで心配なのか、日常診療でよくされる質問です。 世界的にも選手たちが
・競技日程との兼ね合い
・競技パフォーマンスを優先するため
よく使用されているという背景もあり、日本で発売されているピルや月経困難症の保険診療治療薬でひっかかるものはありません。

女性アスリートの婦人科受診の勧め

以下のような症状がある場合には受診をお勧めいたします。

• 15歳を迎えても初潮が来ない
• 月経が3か月来ない
• 月経前になると気分的な波などによってパフォーマンスが落ちる
• 月経痛や出血量がひどい
• 月経と大会日程が重なるので、月経をずらしたい

診療受付時間	月	火	水	木	金	土	日
午前8:45〜12:00	〇	〇	〇	ー	〇	〇	ー
午後15:15〜18:30	〇	〇	〇	ー	〇	ー	ー