月経困難症とは

月経困難症とは月経にともなっておこる病的な状態に悩まされている状態をいいます。月経に伴う疼痛=月経痛だけでなく、頭痛、嘔吐、下痢や気分変動といった様々な症状も含まれます。

 月経困難症患者さんのうち、子宮・卵巣に病気がない「機能性月経困難症」が4割以上である一方、子宮や卵巣に原因疾患がある「器質性月経困難症」の方もいらっしゃるため、初診外来では超音波検査をおこないます。性交渉の経験のない方はお腹の上からの超音波診断となります。  「器質性月経困難症」の原因となる疾患は下記の通りで、これらの疾患を複数合併しているケースも珍しくありません。

1)子宮内膜症

子宮内膜症とは、骨盤内や卵巣など子宮以外の場所で子宮内膜のような性質を持つ組織が増殖する病気です。増殖した組織は子宮内膜と同じように、月経がくると崩れて出血を起こします。子宮内膜は出血とともに腟を通ってカラダの外へ出されますが、子宮以外の場所で増殖してしまった組織には出口がないため、お腹の中にたまって炎症を起こし、激しい痛みなどの症状を引き起こします。子宮内膜症の患者の8割以上の方に月経困難症が認められるといわれています。

2)子宮腺筋症

子宮腺筋症とは、子宮内膜が子宮の筋肉の層にもぐりこみ増殖する病気です。増殖を繰り返すとまわりの筋肉がかたくなり、子宮の壁もどんどん厚くなって、やがて子宮全体が大きくふくらんでいきます。
 激しい痛みにくわえ、出血量も増えることから貧血になることもあります。

3)子宮筋腫

子宮の壁を形づくっている筋肉の一部に良性の腫瘍ができる病気です。はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、子宮の筋肉の中にできた腫瘍の芽が、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの刺激を受け、長い時間をかけて成長すると考えられています。

 激しい月経痛や出血量増加による貧血も起こることがあります。

月経困難症の診断

問診にて、現在の日常生活の支障の程度や月経痛について伺います。  どのような治療が一番いいのかを考えていきます。

月経困難症の治療

器質性月経困難症の場合には原因疾患の治療を行うことが原則となります。機能性月経困難症の治療についてです。

鎮痛薬

約9割の女性が月経時に腹痛や頭痛を感じています。  閉経まではどうしても月経時の痛みとつきあっていかねばなりません。また男女問わず痛みと無縁の人生などありません。思春期の方にはうまく鎮痛剤とつきあって人生を楽に過ごす方法を身につけていただきたいと考えています。

低用量ピル

生理では子宮内膜がはがれ落ちて排出されますが、月経前に子宮内膜が厚いと痛みが強くなります。低用量ピルには子宮内膜が厚くなるのを抑える働きがあり、生理痛を緩和します。また内服中はホルモン変化が少なく抑えられるため、気分の変動や諸症状が抑えられます。  生理痛の強い方の中に内膜症が隠れている場合があり、生理痛自体が内膜症のリスクになるとも言われています。低用量ピル内服により、子宮内膜症の悪化や予防になることが期待できます。

黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト0.5mg)

低用量ピルと同様に子宮内膜を薄く保つ働きがあり、ホルモンの変動も少なく抑えられます。そのため月経痛や月経に伴う諸症状を抑えられます。

低用量ピルと違い、血栓症発症リスクがほとんどありません。そのため、ピルを飲みにくい病気をお持ちの方でも内服することが可能な優れた治療薬です。毎日12回内服する必要があること、低用量ピルに比べ内服中の不正出血の率が高いことが内服を続けられない理由になる方もいます。不正出血は内服期間が長くなると徐々に少なくなっていきます。

子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)

ミレーナを子宮内に挿入・装着することで、子宮内でレボノルゲストレルという黄体ホルモンが持続的に放出されます。子宮内膜の増殖を抑え、子宮内膜自体を薄くすることができるため、経血の量が大幅に減るようになります。

漢方薬

当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などの処方をおこないます