子宮筋層と子宮内膜
人間は直立二足歩行に適した骨盤をもっているため産道が狭く、胎児の頭が脳の大型化のため大きいという、相反する特徴を持っています。生物学的な欠点を補足するために、子宮は出産時に非常にたくさんの物理的な力が求められるようになりました。
そのため子宮はほぼ筋肉でできています。しかし赤ちゃんを子宮内で育てるため、また分娩時に赤ちゃんや胎盤だけはがれるための機能を持たせるために、子宮の内側にテフロン加工のような子宮内膜という組織が形成されています。 子宮内膜は卵巣で分泌されるホルモンの指示により、月経後に毎回つくられ、妊娠しなかった月には崩れて排出されてなくなるというサイクルを繰り返しています。子宮内膜は妊娠・出産のためだけに存在する器官のため、健康な状態であれば閉経後に子宮内膜は形成されません。
子宮内膜増殖症とは
子宮内膜の変化には女性ホルモンが関与しています。子宮内膜の増殖作用があるエストロゲンが過剰な状態になるときや、月経を引き起こすためのプロゲステロンの分泌が少ないときに起こります。つまりホルモン異常のために子宮内膜が異常に形成されすぎる状態、または子宮内膜が崩れなかったために子宮内に残っている状態が子宮内膜増殖症です。
子宮内膜細胞は基本的に人体にとって使い捨ての部分なので、妊娠以外の状態で子宮内に長く留まってしまうと正常ではない異型細胞になります。 異型細胞が増殖を繰り返すと、やがて子宮体がんに変わっていきます。
子宮内膜増殖症の症状
不正出血(月経ではないのに出血がある状態)でみつかる場合がほとんどです。また通常より月経量が増え、貧血や動悸などの症状が出る場合があります。無症状のまま進行してしまうと、子宮体がんになるまで発見されません。
子宮内膜増殖症の診断
超音波検査をおこないます。超音波検査で子宮内膜構造が正常であるかどうかを調べ、子宮内膜が異常に分厚くなっている場合には病理検査を行います。
子宮体がん
子宮内膜増殖症が進行すると子宮体がんになります。自覚症状として重要なのは不正出血です。おりものに血や膿が混ざるなどの異常がある場合も、検査を受けてください。発症時期が更年期や閉経の時期に重なることも多いですが、不正出血などのサインを「ホルモンバランスの乱れ」などと判断して見逃さず、早期発見することが重要です。
また無月経を放置した場合にも起こります。(子宮内膜増殖症の項を参照) 以下の方は注意が必要です。
- 不妊症、妊娠出産経験がない方、閉経が遅い方
- 肥満、糖尿病、高血圧
- 1年に4回以下しか月経の来ない方
- 乳がん、大腸がんの既往や家族歴のある方
- 乳がん治療薬(タモキシフェン)を使用している方
- エコー検査で子宮内膜が厚くなっていることが発見された方
子宮体がん検診のすすめ
一般的に「子宮がん検診」と言えば、子宮頸部細胞診による「子宮頸がん検診」のことです。子宮体がんの検査は、何らかの自覚症状が出た際に受けることになります。自覚症状を見逃さず、産婦人科を受診してください。まずは超音波検査を行い、子宮内膜の状態を調べます。必要であれば内膜の病理検査を行います。 特に子宮体がんの発症リスクの高い方(乳がんホルモン治療中の方など)は、半年に一回の定期的な検診をおすすめします。
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